2026/03
●マンガ
・おやすみプンプン (3~7巻) ※再読
・ラブひな (1巻)
●本
・あそびのかんけい (2巻)
・涼宮ハルヒの憂鬱
・星を継ぐもの
・透明な夜の香り
●アニメ
・違国日記 (9~13話)
●映画
・花緑青が明ける日に
・パリに咲くエトワール
●ゲーム
・ELDEN RING NIGHTREIGN
●音楽
2026/02
●マンガ
☆スキップとローファー (9~11巻)
☆青野くんに触りたいから死にたい (6巻)
・ヒカルの碁 (1~2巻)
・All You Need Is Kill
●本
⚪︎お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件 (1巻)
⚪︎俺の妹がこんなに可愛いわけがない (1巻)
●アニメ
☆違国日記 (5~8話)
◎シャンピニオンの魔女 (3~8話)
・超かぐや姫!
・名探偵プリキュア!(1~3話)
◎サイバーパンク: エッジランナーズ ※再視聴
●ゲーム
☆Z.A.T.O. // I Love the World and Everything In It
⚪︎Lethal Dungeon
・アークナイツ:エンドフィールド
●音楽 (良かったもの)
・単曲
2026/01
●マンガ
・拝啓、在りし日に咲く花たちへ (1巻) ★★★★☆
・青野くんに触りたいから死にたい (~25話) ★★★★☆
●本
・あそびのかんけい (1巻) ★★★
・やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。(~2巻) ※再読 ★★★
・プロジェクト・ヘイル・メアリー ★★★★
●アニメ
・違国日記 (~4話) ★★★★☆
・シャンピニオンの魔女 (~2話) ★★★★
●ゲーム
・アークナイツ:エンドフィールド ★★★★
●音楽 (良かったもの)
・FI I I I ファン・アイ・スリー / bb cream ljk
・単曲→2026/01
※大変参考になったありがたいまとめ→ 2025リリース邦楽個人的BEST100
流れる星、留まるまなざしについて
小学生の頃の話をする。
近所に6、7歳年上の遊び友達がいた。ひとりっ子だった私にとって彼は兄のような存在だった。名字が野村だったのでノム兄と呼んで慕っていた。
彼はよく私を誘って外に出かけた。田舎なので行き先はどこも平凡な場所だったが、通学路周辺しか知らなかった私にはどんな風景も新鮮に映った。
ノム兄と遊ぶ際は必ず彼がその日のコンセプトを決めていた。冒険には目的が必要だ、が彼の口癖で、「アンモナイトの化石を探す」といって河原を散策したり「隠された財宝を発掘する」といって廃墟に忍び込んだりした。
子どもの自分にとってそれらは十分胸を躍らせるに値する体験で、彼が称するように冒険といって相違ない素晴らしい日々だった。
七月になり、夏休みが来た。数日たったある日、ノム兄が切り出した。
「流れ星を見に行くぞ」
彼はいつになく真剣な目をしていた。私は二つ返事で承諾した。
目的が目的だったため、集合時間は夜の0時過ぎになった。初めての夜更かしに私はどきどきした。夕食とお風呂を済ませたあと部屋を暗くしてじっと待ち、時計の針が真上に揃ったことを確認してからこっそり外へ抜け出した。
待ち合わせ場所にはすでにノム兄がいた。外灯に照らされて不敵な笑みを浮かべながら「行くか」と彼は言った。
田んぼのあぜ道を通って村の端の方にある森までやってきた。ノム兄が「ここから入るぞ」と前を指した。手入れのされていない林道が闇へと延びていた。
ノム兄の懐中電灯で足元こそ明るかったものの、周囲は真っ暗だった。時折フクロウの鳴き声が聞こえる以外ほとんど静寂に包まれていた。森に入る前は確認できた星も、中では草木が一帯を覆いつくしていて一筋の光さえ差し込まなかった。
はじめこそ声をかけ合っていた私たちは、傾斜が急になっていくにつれて段々と口数を減らしていった。眠気と疲労の波が押し寄せる中、私は前を行くノム兄の姿だけを頼りにかろうじて歩みを進めた。
「まもなくだ」
ノム兄の声で意識が戻る。
盛り上がった土を越え、枝葉をかき分けると視界が開けた。そこには星空と野原が広がっていた。綺麗だった。
開放感に押されて私は一歩、二歩と足を前に出した。
「おっと、その先気をつけろよ」
ノム兄の注意が飛んだ。歩みを遅め慎重に進むと、土地の中央付近に直径10メートルほどのくぼみが現れた。
「これ、すごいだろ」
ノム兄が横に立った。
「ここに来たかったんだ」
彼に言われる通り、私はくぼみの縁に腰を下ろした。彼もその隣に座った。
ノム兄はしばらく遠くの空を見つめていた。自分もなんとなくその方向を眺めた。
「ちょっと話でもするか」
彼が口を開く。そして、返事を待つこともなく語り始めた。
「お前が生まれるちょうど前の年だな。
夏に流星群が来るってんで、世間ではちょっとした話題になってた。俺の親父もニュースを見て、これはまたとない冒険の機会だと意気込んだ。村で一番高いところに登れば星の光に手が届くかもしれない。親父はそう考えたんだ。そりゃもう嬉しそうだったよ。小さい村には滅多に訪れない一大イベントだからな。
いよいよ当日、親父はこの山にやってきた。そして星を待った。果たしてあいつは……確かに見た。いや、見たどころじゃない。本当に届いたんだ」
ノム兄は一度言葉を切り、息を吸った。
「……ちょうどこの場所に、流れ星のひとつが燃え尽きずに落ちてきた。
親父はそれに当たって、死んじまったんだ」
私はあぜんとした。ノム兄に父がいないことはうっすら察していたが、これまで一度も事情を聞いたことはなかった。言葉が出なかった。
「いや、当時は俺も悲しかったさ。どうして親父がって泣きわめいたよ。でももう流石に過去のことだ。だからお前もそんな顔しないで聞いてくれ」
彼はなだめるような声で話を続けた。
「親父はさ、俺が物心つく前から色々なところに連れて行ってくれたんだ。元々、俺が生まれる前からそんなだったらしい。好奇心のかたまりみたいなやつで、一度疑問を抱いたら自分の目で確かめなきゃ気がすまないたちだった」
「だからこの土地のことなら何でも知ってた。親父はこの村で一番の冒険家だったよ」
彼はそれまで懐かしいとも悲しいともとれない表情をしていた。しかし次第に口角が上がってきたかと思うと、
「……そして最期は世界で一番の幸運者だった、ってわけだ。流れ星に当たる確率ってどのくらいだよ?他に聞いたことないぜ!」
空に向けて彼はひと笑いした。
「あいつは命を捧げてまで冒険の目的を叶えたんだ。後悔なんてみじんもしてないはずさ」
その通りだと思った。私もやっと顔をゆるめて微笑んだ。
その後、長い間二人で黙ってくぼみを見つめていた。そよ風がほてる頬を冷ましてくれて気持ちがよかった。
「……正確に言うと、人が駆けつけたときにはもう煙の立ち昇るこの穴があるだけだった。隕石も親父も、破片すら見つからなかったんだ。警察には行方不明ってことで処理されたよ。でも俺は、あいつは星の光を掴んだんだってずっと信じてる」
並び立つ木々のすき間から徐々に日の光が漏れ出してきた。
「さて、もうこんな時間か。だんだん帰ろうぜ」
彼と私の輪郭がオレンジ色に染まり、辺りが鮮やかに照らされていく。
その瞬間、私は光を受けてきらめく何かを視界の端に捉えた。その輝きはくぼみの中央付近から放たれていた。私はせきをきったように走り出し、斜面を駆け降りた。転がるようにその地点へたどり着くと、光るそれを両手ですくい取った。
「おい、慌てていきなりどうしたんだ」
遅れてノム兄が寄ってきた。私は手にとったものを彼の目の前にかざした。
それは青白く発光する3センチ四方の塊だった。表面には細かい穴がいくつも空いていた。
「これは……」
ノム兄は目を丸くした。私は唾をのんで言葉を待った。
「……これは、親父だ」
紅潮した顔で息を荒げる。
「間違いない、親父の骨だよ。おいおい……まじかよ」
彼はその欠片を手にとり、喜びを表現するように天に掲げた。
「なんだ……ちゃんと残ってたんだ」
光にかざしてひとしきり眺めると、彼は満足そうにこちらに向き直り、私をまっすぐに見た。黒い瞳が朝日の色に濡れていた。
彼は手を伸ばし、私の頭を痛いくらい強く撫でた。
「ありがとう、ありがとうな。一緒に来て、良かった」
私は、ただ嬉しかった。
そこからのことはよく覚えていない。気づくと自室のベッドの上で、時刻は昼を過ぎていた。疲れと眠気で意識を失うように床についたのだろう。
結局流れ星は見なかったが、私はそれよりも大切なものを得た気がしていた。
ノム兄は父の骨を小瓶に入れて、首やかばんにかけて持ち歩くようになった。周りの人は不審がったが、私だけがその意味を知っていた。
時は流れ、私は中学、高校と進学した。大学は県外を選んだ。
ノム兄とは疎遠になった。地元を離れて以降は一度も会っていない。今も元気でやっているだろうか。
さて、私が拾ったあの小さな塊の正体は何だったのだろう。
ノム兄は遺骨だと言い、当時は私も素直にそう思っていた。
しかし、実のところは隕石の欠片だったかもしれない。実際骨は光を浴びてあのようにはきらめかないはずだ。
あるいは、隕石でも人骨でも何でもなかった可能性もある。
ノム兄はよく言えば夢想家で、わるく言えば噓つきだった。彼と河原で拾った"化石"は変な模様のついたただの石ころだったし、廃墟で見つけた"財宝"はさびて使いものにならない部品の寄せ集めだった。
あの時ノム兄が語った話のどこからどこまでが真実なのか私は知らないし、今さら問いただそうとも思わない。ただ仮に"親父の骨"が自覚的な嘘だったとするならば、それは私に対する優しさの発露であって、またこの一件に対する彼なりの了解でもあったのだと思う。
彼は常に現実の彼岸に冒険の目的を見出していた。そこには父の亡霊がたたずんでいたのだろうか。分からないが、とにかく彼の視線と心はいつもここではないどこかに向けられていた。
しかし、欠片を差し出した時のノム兄のきらきらと光るあの瞳は、普段のように遠くの方ではなく、確かに目の前に立つこの私を捉えていた。その事実だけで十分だと私は思う。
現実をまなざすのは難しい。けれどもひとたびそうしたならば、それはきっとあなたに届くものなのだろう。